TAROT WITH COSMOS〜M.Cタロットの詩〜part1〔0愚者、1魔術師〜7戦車〕
0 愚者
もはや彼をDon Juan ドンファンと呼ぶ者はいない
なぜなら彼は 世捨て人
何処ともなく彷徨う 吟遊詩人
cognacコニャックの酒杯 大地に注いで祝宴を
ポケットの銀貨ばらまいて
朝露のクリスマスローズの葉陰にコイン
黎明は夜明けの湿った粒子
霧を纏う 神聖なエピキュリアン
醒めきった FOOLISH愚行
蜜月は去り
愛の情熱は燃え尽きて
彼の魂は彼の小宇宙へと飛び立つ
絶望の夜は0ゼロに向かう旅の幕開け
果てしない銀河の天狼星
そして彼を愛する私も
終わりなきFOOLISH
1 魔術師
黒いまなざしのマジシャン 輝く意思の発光体で
純化した結晶体のダイヤモンドを手にかざす
その秘儀の英知を披露しよう
水星より流線型描いた光線 視界をさえぎり
一点に集中したエナジー四元素
万華鏡 光を集めて 反射鏡 プリズムで放つ
フラスコの中の愛 溶解する液体 渦巻くタキオン超高速仮想粒子
コールタールを内包した水晶は 金剛石に劣らぬ輝き
あまつ眠りさえ 体温の下降が 鎮静する思考を助く
シナプスの化学反応
彼はひらめきを記述する 大地に捕獲された表現者
切り取られた 錬金術の暗号は
古びた 蝶の標本箱の 裏表紙
2女教皇
さらさらと衣擦れの部屋 日没前の祈りの祭壇
夜空に透き通る ひび割れた薄い新月は
宵闇に滲んだ涙の波紋
裏庭の彫像 殉教者聖バレンタイン
貴女は月暦を保持して 静かに時を待つ いつも いつも
砂時計 時を刻んで 誰もこない
アラバスターはらはらと 濡れたつま先 氷の女王
裾に横たわる蒼い三日月 それは
凍結したままの感情のオブジェ
教えてください どうか 湖に沈めた銀の指輪
見つからない 深層の何かを 私はどこへも行けないのです
水滴落ちるガラス窓に 忍び寄るゴーストの幻影
・・悲しげに見つめた 男装の女教皇ジョアン
3女帝
油彩画の命宿る 春の三女神
そよ風のデュエット 艶やかな髪を梳く
豊穣の夢紡ぐ指先
陽光浴びる樹々の緑 愛を奏でる竪琴
今日を愛し
光を美を 優しさを愛する
色褪せない 理想を描いた画家の夢
いつの世にも受け継ぐ イデア
愛を宿して 愛を抱きしめ
形を変えて 時が忘れ去っても
太陽圏で身を焦がし 蘇る不死鳥のように
愛はどこまでも愛に近づく
白いキャンパス どんな愛をデッサンしよう
4 皇帝
鈍くきらめく剣を杖に皇帝は 整列した戦闘機を指揮する
失墜の南十字星 真昼の黄金は 熱風に溶けていく
321・・
管制塔で指示を待つ軍曹
民衆の喚声に決別した夜
地雷は蜘蛛の糸 砂漠に散る名も無き赤い花
レーダーに狙われる都市 鉄の花火の宴
埋め込まれた記憶 眼を凝らせば
歴史は繰り返す 自動装置のように
王座と引き換えに 塗り替える未来図
我らの絶対国家よ
エゴイストの手から手へ
金塊は地中に埋もれて陽の目をみない
大衆は願う 真の平和を
今日も願う 裏切りのない明日を
5法皇
神という名のもと 聖なる戦い ステンドグラスの兵士たち
五色の光に 映し出された法皇はmillennium1000年を生きる
空を飛ぶ夢 航海する夢 digital cyber survival
高速化する文明の 暗号化されたmatrix
目指すは最先端 乗り込む異郷の地
陸に打ち上げられた異形の深海魚
海底都市は伝説 パノラマの空中庭園
ファンタジーなんてない 四次元の世界史
今夜 静まりかえった 砂漠のピラミッドに眠る
蘇った目のエメラルド
伝えよう その昔 迫りくる熾火を逃れ
語り継がれた真実の言葉
中世の聖堂に 燦然と胸打つそのpassion
微かな陽光に Gothicの魔法 色ガラスの晩餐会
6 恋人
赤い実落ちた エデンの恋人たち
キューピットの放つ矢 若者を悩ませる
ふたりの愛人 求愛の迷い
恋の媚薬と 薔薇の花束
馥郁たる香り 指先に棘の痛み
微笑みかける エロス
手と手を繋いで 都へと誘う白のイヴ
瞼の向こうに タナトス
永遠を夢見て 死海で暮らす黒のリリス
愛の季節 舞い降りたインスピレーション
彫像に恋焦がれた ピュグマリオンのように
黄泉へと花嫁を連れ戻す オルフェウスのように
アンニュイな午後 誘惑の時間
華やかな憂い分かち合う 六月の恋人
7 戦車
金糸の髪をなびかせ スフィンクスの馬車
フェラーリさながら操縦する王子
もっと速く もっと遠く 勝利のシバ神を追う
直線の高速ライン
風を切って 7月の夜明け 朝日が屠る南斗六星
白鳥座のデネブ墜ちて 天の川 海に消えた
アクセル全開 南南東へ
遠ざかる街 白い夏椿 敷いた轍
乾いてゆく涙 加熱した情熱の行く先は
鍵盤の上で華麗に疾走する 七オクターブのロンド
僕には聴こえるんだ 止まらない風のプレスト
一番底から 一番の高みまで
抜けるような青空に 眩しく誓った愛は
金ぴかの勲章さ
魂の王道を戦車は進む
〜以下Part2へ続く